不倫慰謝料の分割払いについて
1 不倫慰謝料の分割払いは可能
結論から申し上げますと、法律上、不倫慰謝料を分割して支払うことについての制限はありません。
不倫をされた側(不倫慰謝料の支払いを受ける側)が合意するのであれば、不倫慰謝料を分割で支払うことはできます。
現実的には、不倫をした側(不倫慰謝料を支払う側)の収入が低い場合や、保有資産が少ないという場合、分割払いにせざるを得ないということもあります。
もっとも、不倫をされた側としては、分割で支払いを受けることについてはいくつかのリスクや不利益があります。
そのため、示談の条件が厳しくなる傾向にあります。
以下、分割払いにすることが示談に与える影響について説明します。
2 不倫慰謝料の金額が高くなる傾向がある
一般的に、借金などの債務の返済においては、分割して残債務を返済する場合の方が、一括で支払う場合に比べ、支払総額が高くなります。
分割払いの場合、全額の支払いを受けるまで長い時間がかかり、債権者側は回収不能になるリスクを長期間負うことになります。
そこで、リスクの対価という意味合いで支払総額を高く設定します。
不倫慰謝料についても同じことが言えるため、一括で支払う場合に比べて、分割払いの方が慰謝料の金額が高くなる傾向にあります。
3 期限の利益喪失条項の設定
分割して債務を返済するという契約においては、多くの場合、一定期間返済を滞納した場合には、残債務を一括で支払うことになる旨の条項(期限の利益喪失条項)が設定されます。
期限の利益を失った場合、不倫をされた側は、訴訟によって残債務の支払いを請求することができるようになります。
4 強制執行認諾文言付公正証書で示談書を作成することもある
先述のとおり、不倫慰謝料を分割払いにした場合、不倫をされた側としては慰謝料が回収できなくなるリスクを負います。
仮に支払いを受けられなくなり、期限の利益を喪失した場合には、不倫をされた側は訴訟を提起して判決を取得し、その後強制執行をしなければなりません。
予め示談書を強制執行認諾文言付公正証書で作成しておくと、判決を得ることなく強制執行ができます。
慰謝料を分割払いにしたい場合には、不倫をされた側から強制執行認諾文言付公正証書で示談書を作成することを求められることがあります。